マネジメント

買う物を賢く選ぶ 価格と品質のバイアスを回避する3つの視点

デザインや素材にこだわっている500円の高級ボールペンと、ただ書くことができる100円の簡素なボールペンが並んでいたら、あなたならどちらを選びますか?

多くの人は価格が高い方を選んでしまうかもしれません。

とはいえ、「書く機能」としてはどちらのペンも遜色なく同じように使えるボールペンです。

果たしてあなたの判断は本当に賢い選択だったのでしょうか?

これは「価格が高い=品質が良い」という認知バイアスの影響で、価格に惑わされている可能性があるからです。

この記事では、「価格と品質の関係に対する認知バイアスが起こる仕組みと、そのバイアスを避けるためのの具体的な方法」について解説していきます。

あなたが次に買い物をするときには、価格に惑わされずに、より適切な判断ができるようになるでしょう。

 

業者が良く用いる価格バイアスの活用例

多くの人は「価格が安い商品は品質が悪い」と思い込んでおり、同時に『価格が高い商品は品質が良い』とも思い込んでいます。

高いものほど品質が良いケースが多いことは確かですので、普段の買い物でも無意識にそう思い込むことがあるかもしれません。

しかし、実際には価格と品質が必ずしも一致しないことも、また事実です。

たとえば、安価な価格で購入した鍋が5年以上使えたのに対して、ブランド品の高価な鍋が1年も経たないうちに取っ手が外れて使えなくなることもあり得ますよね。

このような例からもわかるように、価格と品質を安易に結びつけるのは危険です。

中には、『高品質』と消費者に錯覚させるために商品を不当に高く設定し、購入を促すうような業者も存在します。

 

価格と品質のバイアスが生まれる4つの理由

なぜ、価格と品質に対するバイアスが発生してしまうのでしょうか?

それには、以下の4つの要因があります。

1.学習経験がもたらす価格と品質のバイアス

私たちは過去の経験から「安いものはすぐ壊れる」「高価なものは長持ちする」といった固定観念を形成しがちです。

この経験があることで、「価格が高いほど品質が良い」という思い込みに陥りやすくなります。

私たちが過去に経験したことが、後の行動に強く影響を与えることがあり、心理学において「オペラント条件付け」と呼ばれています。

たとえば、「安価な商品がすぐに壊れた」という経験があると、私たちは次第に「安い=悪い」と認識を持つようになります。

一方で、「高価な商品が長く使えた」という経験があると、「高い=良い」という認識を持つようになります。

これらの学習経験が、私たちの価格と品質に対してバイアスをかける一因を担っています。

 

ちなみに、以前紹介したIF-THENプランニングという行動習慣を作る方法もこの条件が関係しています。

【参考記事】

行動を連鎖させて習慣を変える~IF Thenプランニング~

2.社会的ステータスがもたらす価格と品質のバイアス

高価な商品はしばしばステータスの象徴とされることが多く、特にブランド品ではその傾向が強く出ます。

社会的評価を高めたいという欲求から、高価な商品を選んでしまうことがよくあります。

この現象を裏付ける研究の一つとして、Han、Nunes、Drèze(2010年)が行った実験があります。

この研究では、ブランド品を身に着けることで他者からの評価が実際に高まることが示されました。

この結果は、ブランド品が単なる機能やデザイン以上に、社会的な評価を左右する要因として働いていることを示しています。

3.希少性効果がもたらす価格と品質のバイアス

「高価な商品=希少性がある=価値が高い」と感じてしまうのも、バイアスの一つです。

限定商品や希少な商品は価格が高く設定されることが多く、それにより消費者は自然とその商品に高い価値を感じてしまいます。

この現象に関する有名な実験が、ロバート・チャルディーニの著書『影響力の武器』で紹介されています。

この実験では、商品を「限定品」として宣伝することで、その価値が消費者により高く認識されることが確認されました。

希少性をアピールすることで、商品への需要が大きく高まり、結果として高価格が正当化される強力なバイアスが形成されます。

4.ヒューリスティックがもたらす価格と品質のバイアス

すべての商品の情報を詳細に調べる時間や労力をかけたくないため、私たちは無意識のうちに価格を手軽な判断基準として使ってしまいます。

このような心理的ショートカットによる判断方法を「ヒューリスティック」と呼びます。

これにより、高価な商品が「良いもの」と直感的に判断され、低価格な商品が「悪いもの」と誤解されることがあります。

例えば、ダニエル・カーネマンエイモス・トヴェルスキーによる研究では、人々が複雑な判断をするときにこのようなショートカットを使うことが明らかにされています。

価格を基準にすることで、無意識のうちに「高いものは良いもの」と決めつけてしまい、逆に低価格の商品は「品質が劣る」と誤解する傾向が見受けられました。

これもまた、価格と品質に関するバイアスを強化する要因の一つといえます。

子育てと報酬:オペラント条件付けによる弊害

このオペラント条件付けは、子育てをするときによく用いられます。

たとえば、子供が宿題をやった後にお菓子を与える方法です。

短期的には効果を見込める方法ではありますが、長期的に見た場合「お菓子がないと宿題をしなくなるリスク」があります。

これもバイアスと同じく、行動を固定観念により強化されるメカニズムです。

高額商品を購入してしまう心理とは?

価格と品質に対するバイアスの背景には、社会的な要因も関わっています。

たとえば、自己投資が大事だという考え方が浸透している現代社会では、「成功するためにはリスクを取るべきだ」という心理を利用したマーケティングが頻繁に行われています。

高額なセミナーや商品が、「成功者が使用している」と宣伝されることで、消費者はその価値を過大評価し、高額な支払いに納得してしまうことも少なくありません。

 

納得できる価値交換をするため心がける3つのこと

買い物をするとき、価格に惑わされずに本当に価値のあるものを選ぶには、事前にいくつかの視点を持つことが大切です。

バイアスに流されずに冷静に判断するために、以下の3つのことを心がけてみましょう。

1.本当に必要かを見極める

その商品が自分にとって本当に必要かどうかを冷静に判断しましょう。

衝動買いを防ぐためには、「この商品がなかったらどうなるか?」と自問してみることが有効です。

2.価格と機能を冷静に比較する

高価なものと安価なものの違いを具体的に考えてみましょう。

保証期間やアフターサービス、素材などを基準にすることで、単純に価格だけで判断するのを避けることができます。

「この2つの機能面の違いは何だろう?」と自問しながら比較することが有効です。

3.購入後の満足度を予測する

実際にその商品を使ってみたときにどれだけ満足できるかを考えてみましょう。

「買ったものを使う頻度」や「他の人のレビュー」を参考にすることで、購入後の満足度を予測しやすくなります。

「この商品を自分で使ったときに、満足感で満たされるだろうか?」などと自問してみることが有効です。

 

まとめ:価格と品質のバイアスに打ち勝つ方法

今回は「価格と品質の関係に対する認知バイアス」について解説し、そのバイアスを避けるための具体的な方法を紹介しました。

そのための方法について、以下に整理します。

価格と品質のバイアスに打ち勝つ方法
  • オペラント条件付けが価格と品質のバイアスを与える
    報酬を与えることで行動が強化されるメカニズムがあり、これがバイアスを生む要因の一つとなっています。
  • 価格が高いからといって必ずしも品質が良いわけではない
    私たちの過去の学習経験やオペラント条件付けによって、「高価な商品=良い商品」というバイアスが形成されていますが、必ずしも価格と品質が一致するわけではありません。
  • 社会的ステータスや希少性効果もバイアスに影響する
    ブランド品や限定品などは、価格が高いことで価値があると感じやすく、社会的評価を高めたいという欲求から選ばれがちです。
  • ヒューリスティックスがバイアスに影響する
    商品について詳細に調べる手間を省くために、価格を判断基準にしてしまうことがある。その結果、高価格商品を無意識に選んでしまうことがあるため注意が必要です。
  • 自分に合った商品を選ぶための3つの質問を活用する
    1. 本当に必要なものか?
    2. 価格と機能の違いを冷静に比較したか?
    3. 購入後の満足度を予測できるか?

衝動買いや不必要な高額商品の購入を避けることで、賢い消費者としての行動ができるようになるでしょう。

自分にとって本当に価値のある商品を買えるように、今回の内容を買い物をする際に活用してみてください。

それでは、皆さんの日常がより充実したものになりますように!

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